ダマリが小学高学年の頃。夏休みに町が開催していた「歩け歩け大会」というイベントがあった。32kmくらいを歩くというもので、歩く時間帯が夜スタートの翌日朝にゴールという、子どもにとって魅惑的なものだった。
昨今では考えられないが、大人同伴でなくても大丈夫で、ダマリは友達も誘わず1人で参加した。よく親も許可してくれたもんだ。
ダマリの記憶だと20:00頃スタートした気がする。同じクラスの男子が2人で先を歩いていた。思い返すと大人の参加者はいなかったから、小中学生向けのイベントだったのかな。
暗い夜道をひたすら歩く。夜風が気持ちよかった。所々で休憩地点があり、軽トラの荷台に積まれた給水タンクから、みんなが水をもらっていたのを思い出す。たしか、ジュースもあったな。
だんだん眠気と疲れが襲ってきたが、ダマリは不思議な感覚を覚えていた。知らない道を知らない人達と歩く心地良さ。夏虫が鳴いて、月明かりが夜道を照らし、風の匂いがなんだかワクワクする。きっと、これが冒険だ。
朝8:00頃、役場にゴール。母が迎えに来てくれていた。とても清々しく、なんだか少し自信がついたような。そんな夏だった。
どうやらダマリの冒険心は、大人になって培われたものではなく、生まれ持った性質らしい。これから先も、知らない道を知らない人達と歩く人生を選び続けるだろう。